俳句の作り方 檸檬の俳句
暗がりに檸檬浮かぶは死後の景 三谷昭みたにあきら
くらがりに れもんうかぶは しごのけい
檸檬れもん が秋の季語。
「ミカン科の常緑低木の実で秋に黄熟する。
果汁が多く香りと酸味が強いだけでなく、ビタミンⅭが豊富。
料理に用いるほかレモンスカッシュなどにして飲むが、四季を通じて出回っているので
季節感が希薄になりがち。」
(俳句歳時記 秋 角川書店編)
暗がりに檸檬浮かぶは死後の景
暗がりに檸檬浮かぶは死後の景
句意を申し上げます。
沈黙の闇に檸檬が浮かんでいる。
その無音こそが私に死後の世界を見せていた。
鑑賞してみましょう。
檸檬が転がるときはわずかな音があるはずなのに、空間は完全に沈黙していた。
静けさが深すぎて黄色が異様に際立つ。
音が消えた世界では、物の存在が逆に強くなる。
私はその沈黙を死後の景の入り口として受け取った。
檸檬は香りも音も持たず、ただ形だけが闇に置かれている。
こすれば幽かな異変が生まれるはずなのに何も起きない。
音の欠落は生命の機能が剥がれ落ちた証の様だった。
私は沈黙の空間のなかで、死後の景の具体物を欲した。
やがて檸檬の輪郭が闇に溶け、視力が奪われていくように感じた。
最後まで音は聞こえず、無音の空間は膜につつまれたままだ。
そして無音の空間を包む膜なしに死後の景は成立しないのだと気づいた。
檸檬が浮かびそして消えた軌跡は、音のない世界の確かな証拠として私の中に残った。
暗がりに檸檬浮かぶは死後の景
